叶う。 Chapter3




人間の感情とは、本当に不思議だ。
自分が死ぬということが、こうして事前に分かっていると何故こんなにも心が落ち着いて居られるのだろう。

それはきっと心の準備が出来ているからなんだろうと思う。

だけれど人は何の前触れもなく、突然命を落とすことの方が圧倒的に多い。

だから死ぬ間際になれば、慌てふためくし周りもそれを理解出来ずに悲しむのだ。


でも私にはそれをきちんと理解する時間が与えられた。
だからお父さんにも、美弥にも、和也にも、家族にも、きちんと感謝を伝える手紙と日記を託すことが出来た。


生きていたいかと聞かれれば、もう少し生きたいけれど、それでも私は準備出来ているだけ有難かった。


だから後悔はない。
それにきっと一瞬だろうと思う。


もし私が殺されたとしても、それは一瞬だろう。
だから苦しまずに逝けるはずだ。


私はそう思って瞳を閉じた。


もう、そろそろだろう。
車はもう1時間近く走り続けている。

微かに視界に映るのは、木々に囲まれた景色に変わって来た。


お父さんの薔薇の家のように、きっと双子の父親も人里離れた場所に住んでいるんだろうと何となくそう思った。








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