叶う。 Chapter3
その場所に着いたのは、それから数十分程度の時間だった。
突然停まった車に私がゆっくりと瞳を開くと、目の前にある巨大な城門が視界に入って映る。
何となくお父さんの家を想像していた私は、あまりのスケールの違いにほんの少しだけ動揺しそうになった。
ゴホンと、お父さんが咳払いをしたので私はその意味を理解して、また感情を表に出さないようになるべく周りを見ないように少しだけ俯いた。
動揺しちゃだめだ。
暫く待つと城門は鈍い音を立てながらゆっくりと開いて、車は更にその先に向かう。
少し緩やかな坂を車が登り始めると見えてきた。
その瞬間、私は卒倒しそうなほど眩暈がした。
これは家じゃない。
城だ。
立派なその建物は、山を切り開いた中間に聳え立っていた。
それだけでも動揺してしまいそうなほど、その城はまるで双子の父親のように存在感の塊だった。
車はその広大な敷地にあるこれまた巨大な玄関の前で、ゆっくりと停車した。
助手席から降りた男が、私の座る後部座席のドアを開けた。
そして手を差し出されたので、私はその手に自分の手を乗せて姿勢を崩さずに車を降りた。
動揺してはダメだ。
私は今にも震えだしそうな自分に、そう言い聞かせた。