叶う。 Chapter3
玄関にもいるけれど、あちらこちらにスーツにサングラスを掛けた人達が居る。
きっと全員が警備なんだろうと思うと、下手な動きをしたら一瞬にして殺されるんだろうと思う。
それは出来たら勘弁願いたい。
せめてママ達の顔を見てからにしてもらいたかった私は、車を降りたお父さんの隣に背筋を伸ばしてきちんと立った。
お父さんはそんな私に冷めた目を向けると、自分の腕を差し出した。
それは掴まれということだと思った私は、表情に出さないようにお父さんの腕に自分の腕を添えた。
続けて美弥とお父さんの付き人が車を降りた。
2人は当たり前のように、自分の胸ポケットや足首に固定されていたらしい拳銃のような物を入り口に居た人に差し出すと、ボディチェックを受けた。
そういえば私も以前やられたことがあったことを思い出し、何故今はされないのかがとても不思議に思えた。
そんな私にお父さんは唇を動かさずに小さな声でこう言った。
「・・・俺達はゲストなわけだ。」
お父さんはそう言って、冷たい瞳で私を見るとこう言った。
「失礼の無いように。」
私はあまり意味が分からなかったけれど、ただ感情を出さないように頷いた。
そして開かれた巨大な玄関から、私達はゆっくりとその城へと足を踏み入れた。