叶う。 Chapter3
玄関に入ると、一体何人居るんだろうというくらいのメイドやスーツを着た人達に一斉に頭を下げられた。
その人達は真っ直ぐに一列に並んで居たけれど、直ぐに数人のメイドが私に向かってやってきた。
「お嬢様はこちらへ。」
メイドは丁寧な英語で私にそう言った。
「・・・何故だ?」
お父さんは感情を全く見せないまま、静かにそうメイドに聞いた。
「本日は晩餐へのご招待をと、旦那様に伺っております。ですのでドレスをご用意させて頂いております。晩餐までに支度をとのことですので、お嬢様にはお着替えをして頂かなくてはなりません。」
私はその言葉に、途端に不安になった。
お父さんと離れるのは勿論嫌だし、晩餐に招待するとは一体どういうつもりなのか、双子の父親が何を考えているのかが全く分からなくなった。
意味のわからないことは恐怖心を煽る。
「・・・分かった。」
お父さんは冷たくそう言って、私を置いたままどんどん奥へと進んで行ってしまった。
取り残された私は一瞬混乱しそうになったけれど、美弥が直ぐに私の隣にやってきてメイドに説明した。
「私はお嬢様の付き人ですので、ご一緒させて頂いても?」
美弥の言葉に、メイドは黙って頷くとお父さんが向かった方向ではない方向へと私達を連れて歩き出した。