叶う。 Chapter3
やっぱり時間で勝手に点くようになっているのだと思った。
何だか一瞬気が抜けた。
動じることはなくても、心はやっぱり過敏になっている。
その時だった。
コンコン、と部屋の扉がノックされた。
私はきちんと背筋を伸ばして、ドアに視線を向けた。
その瞬間、カチャリと小さな音がして鍵が開けられたのが耳に聞こえてきた。
そして扉が開くと、そこにはメイドがまた4人揃っていて、部屋に入って来ると丁寧にお辞儀をした。
「晩餐のご用意が整いましたので、ご案内致します。」
私はその言葉にゆっくりとソファを立ち上がると、また先程と同じようにメイドに囲まれながらその部屋を出た。
静かな廊下にヒールのコツコツと言う音がとても響いた。
私はやっぱり周りを一切見ずに、ただ先頭を歩くメイドの後頭部をじっと見つめながら歩いた。
背筋を伸ばして真っ直ぐ前を向いたまま、私達はその場所へと向かう。
私は双子の父親の瞳を思い出し、浅く息を吸い込んだ。
大丈夫。
今ならきっと表情に出さないで居られる。
家族が待っている。
そう思うと、何故だかとても冷静になれる。
後ろから着いて来る美弥のことが、ほんの少しだけ気がかりだったけれど、きっと美弥は大丈夫だと私は信じた。
と言うよりも、信じるしかなかった。