叶う。 Chapter3
やがてメイドはゆっくりと立ち止まった。
私は視線をメイドの頭から、その目の前に迫ったマホガニー色の光沢がある大きな扉に向けた。
扉の両脇にはスーツを着て、白い手袋をはめた鋭い顔付きの男性が左右に1人ずつ立っている。
男性が扉に手を掛けると、メイドはまるで中を見てはいけないかのように素早く男性が居た場所に移動すると一斉に頭を下げた。
私は唾を飲み込むと、一瞬だけ目を伏せた。
シオンの瞳をじっと思い浮かべる。
8年も一緒に居たんだ。
出来る、私にもきっと出来る。
シオンのあの瞳を鮮明に思い出し、私はゆっくりと顔を上げた。
その瞬間・・・
その扉がゆっくりと開かれた。
その部屋には巨大なダイニングテーブルが置かれていた。
テーブルに置かれた幾つもの燭台に、蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れている。
銀の花瓶に綺麗な花が幾つも連なって飾られているその光景は、はっきりは見えないけれど何となく視界に映った。
テーブルに綺麗に置かれた食器や調度品は恐らく全て銀で出来ているだろうことが、蝋燭の炎に照らされて時折光を反射させてキラキラと視界に入ってきたので、気がついた。
だけれど真っ直ぐ前を見つめていた私の視界に映ったのは深い蒼。
そのテーブルの上座に座り、テーブルの上で指を組んで私をじっと見つめている双子の父親の瞳だった。