叶う。 Chapter3
その瞳は相変わらず氷のように冷たく、私の心を突き刺すような鋭い瞳だった。
手足が震えてしまわないうちに、私は表情を変えずにドレスの裾を両手で持つと片足を折り丁寧にお辞儀をした。
“失礼のないように”と言った、お父さんの言葉を思い出し、そうするべきだと咄嗟に判断したからだ。
そして私がゆっくりと顔を上げると、双子の父親は相変わらず耳に深く残る、威圧感たっぷりな声音でこう言った。
「少し大きくなったようだな?どうぞ、座って。」
そう言って顔を上げた私に、相変わらず冷たい視線を浴びせながら、口角だけを上げて左側に手を向けた。
私は双子の父親が向けた方向にゆっくりと、姿勢を崩さないように慎重に歩いた。
足元が今にも震えだしそうだったけれど、私は必死に頭に難しい音符を思い浮かべて恐怖を掻き消した。
その方向には、お父さんが座っているのが分かっていた。
だけれどお父さんは一切こっちを見る気配すらない。
それは逆に有難かった。
何故なら今、お父さんと視線を合わせたら私はきっと恐怖で動けなくなってしまう。
双子の父親の存在感は、シオンやお父さんですら比較対象にもならないほどの威圧感がある。
まるでこの食卓の空気が、全て凍りついてしまったかのような、そんな気分にすらさせてくる。