叶う。 Chapter3
私がお父さんの近くに行くと、その隣の椅子を待機していた男性がそっと引いた。
そこに座るのだと判断した私は、物音すら立てないように静かに椅子に腰を下ろした。
お父さんの後ろにはお父さんの付き人が、私の後ろには美弥がそれぞれ少し離れて立っている。
お父さんまでの距離は1mくらいはあるだろうか。
そんなことを考えて、私はドレスを綺麗に直すとゆっくりと顔を上げた。
目の前にはレオンが座っていた。
私はその光景にテーブルクロスの下に隠れた両手を思わずぎゅっと握り締めた。
その距離は2メートル以上はあるだろうけれど、目の前に居るレオンは瞳が合うと一瞬だけ微かな笑みを浮かべた気がした。
レオンは最後に会った時とほとんど変わっていなかった。
思わず泣きそうな気分になる。
私は不自然にならない程度に、視線を動かした。
レオンの隣には、間違いなくシオンが座っている。
そしてシオンの隣に居るのは、間違いなくママだった。
ママが居るのは上座の直ぐ近くだったので、そっちに視線を向けることがどうしても出来ない。
私は少しだけ視線を動かして、シオンの瞳を見た。
何の感情すらない瞳は、退屈そうにずっと正面を向いている。
暫く盗み見ていたけれど、シオンは全くこっちを向くことも、その瞳に感情が表れることも一切なかった。
それはとても私の恐怖心を煽った。