叶う。 Chapter3
私は書きながら、シャーペンのペン先でトントンとリズムを取り始めた。
上手く文章に出来ない時、私は自然とそんな仕草をしてしまう。
暫くそうしていると、私はママの事を書いておかなくてはと思い出し、ママがしてくれたこと、自分の身を犠牲にしてまで私を守ってくれた事を文章にして書き始めた。
途端に涙が頬を伝う。
ポタポタと流れ落ちる涙は、日記帳に不規則な水玉を描いていたけれど、私は泣きながらもそれを全て文章にして日記帳を閉じて鍵をかけた。
もう人前では絶対に泣かないと誓ったけれど、やっぱり一人になるとどうしても涙が止まらない。
お父さんから聞いたシオンの言葉が、何故か余計に私の涙腺を刺激した。
だけれどシオンはまだきっと望んでいてくれているはずだ。
私が傍にいる事を。
最後に私を抱き締めたシオンの優しい瞳の色を、私はまだ忘れてはいない。
例えシオンがもう私に会いたくないと言っても、私は会いたいのだ。
ママにも、シオンにも、レオンにも。
大人は皆、早く忘れろというけれど私は諦めるくらいなら足掻いてみたいと思う。
それでも、願いを叶えることが出来なかったとしても、やらずに後悔するくらいなら、やって後悔した方が良いとも思う。
お父さんの言うとおり、私はまだ子供なのかもしれないけれど、私は自分が子供で良かったと心からそう思う。