叶う。 Chapter3
その後私達は、無駄に広い廊下を通ってその場所へと向かった。
無言で歩くその道はとても長く感じる。
先頭には双子の父親が居て、前後左右に付き人を従えていた。
その後ろにはシオンとレオンが並んで歩いて、その横に二人の付き人だろう人が一緒に歩いている。
私とお父さんは、美弥とお父さんの付き人を連れて一番後ろからその後を歩いた。
履きなれないヒールに足が痛む。
だけれど私は姿勢を崩さないように気を付けながら、真っ直ぐに前を向いたまま歩いた。
直ぐ目の前にシオンが居る。
その後ろ姿をじっと見つめる。
きっとシオンは、私の視線を感じているだろう。
少しだけ伸びた髪が、月明かりに照らされてキラキラと時折風に揺れた。
また少しだけ背が伸びたような気がする。
そんなことを思うと、何故だか時間の流れを感じた。
その広い背中も、肌の温もりも、私は何故かしっかりと記憶に残っている。
こんなに近くに居るのに、触れることすら許されないのが、何だか酷く寂しかった。
私が一人そんな感傷に浸っていると、前を歩いていた双子の父親が足を止めた。
どうやらその場所に、ピアノが置いてあるんだろう。
付き人が二人がかりでその大きな扉をゆっくりと開いた。