叶う。 Chapter3
レクイエム
/祈り
私はゆっくりとなるべくヒールの音を立てずに、ピアノの前に辿り着いた。
双子の父親は、そんな私をじっと見つめながら椅子に両手を置いて私を見下ろしていた。
こうして立ち上がった双子の父親の傍に立つと、その威圧的な雰囲気はシオンにそっくりだと思った。
恐らく、身長はシオンより少しだけ低いくらいかもしれないけれど、威圧感はその倍すらあるんじゃないかとすら感じた。
私は静かに一礼すると、震えてしまう前にピアノと向き合おうとその椅子に浅く座った。
双子の父親はそれを確認すると、もう既に椅子に並んで座る、お父さんとレオンとシオンの隣にある空いた席に、ゆったりと腰を下ろした。
全員の視線を一斉に、肌にひしひしと感じる。
だけれど私の意識はピアノの集中し始めた。
ペダルを踏むのに、このヒールは高すぎるし椅子の位置が若干低く感じた私は、完璧に演奏をするためにそれを伝えることにした。
「申し訳ありませんが、サンダルを脱いで椅子を調整させて頂いても宜しいでしょうか?」
私は双子の父親に真っ直ぐに視線を向けて、しっかりとそう言った。
双子の父親はそんな私を一瞥すると、また口角の片方だけを上げてこう言った。
「それは、失礼。どうぞ、お好きなように。」
そう言って、少しだけ前屈みになって両手を膝の辺りで組んで試すような視線で私を見つめた。