叶う。 Chapter3
「素晴らしい・・・実に素晴らしい。これだけ完璧な美しい演奏を聴いたのは久しぶりだ。うちの子供達はここまで完璧にピアノを演奏することが出来ないからね。」
肩に伝わる感触に、背筋がぞっとした。
深く響く声音が耳にこびりついて離れない。
「実に素晴らしいが・・・・・非常に残念だ。」
双子の父親は吐き捨てるようにそう言って、私の肩から手を離した。
そしてゆっくりと段差を降りると、シオンの目の前に立った。
私は椅子に座ったまま、何も考える事が出来ずにその光景をじっと眺めていた。
双子の父親はシオンを見下ろしたまま、その胸ポケットから拳銃を取り出すと、それをシオンの目の前に差し出した。
シオンは相変わらず表情を変えることも、動揺することもなく、当たり前のようにそれを受け取ると、椅子から立ち上がった。
そしてゆっくりと私の方に向かって歩いてくる。
長くなった前髪の隙間から、シオンの蒼い瞳が真っ直ぐに私の瞳を見つめている。
その綺麗な瞳は、やっぱり生気すら感じられないほどに曇っている。
私達は瞬きすらせずに見つめ合ってた。
シオン・・・
目の前に立って私を見下ろしているシオンは、蔑んだ瞳で私をじっと見つめ続けた。
右手には、拳銃が握られている。