叶う。 Chapter3
「素晴らしい演奏を聴かせてくれたお礼に、君には特別に祈る時間をあげよう。」
双子の父親はそう言って立ち上がり、見つめ合う私達の横までやってくると、シオンの隣に立った。
そしてシオンの肩に手を乗せる。
私は2人から見下ろされながらも、シオンとの視線を逸らせずにいた。
「こんな結果になってしまって、申し訳ないと思っているよ。君には色々とお世話になったからね。」
双子の父親はそう言って、溜息混じりにこう言った。
「君は壊れた息子を元に戻してくれた、とリサが言っていたんだよ。君が居たから、ジャスティンはこうして跡取りとしてこの場所に戻る事が出来た。」
双子の父親はそう言ってシオンから手を離すと、後ろで手を組みながら窓辺に向かってゆっくりと歩いて行ったのが何となく分かった。
だけれど私はじっとシオンと見つめ合ったまま硬直していた。
何とかシオンの感情を少しでも読み取ろうと、必死でその瞳を見つめ続けた。
「だけどね、残念なことに息子にはまだ足りないことがある。ここ1年近く、私はそれが何なのか、ずっと考えていたんだよ。」
双子の父親は相変わらず冷めた感情の無い声で、一人演説を続けていた。
「それが一体何なのか。ジャスティンは優秀だからね、見抜くのがとても難しかった。だけどやっと分かったんだ・・・。」