叶う。 Chapter3
「・・・・全員動くな。」
父親に負けないくらい威圧感たっぷりの声音でシオンはそう言うと、私を隠すように背を向けてその場にいる人達の方をゆっくりと振り返った。
久しぶりに聴いたシオンの声に、私は思わず涙を浮かべた。
その声は耳に心地良く、私は緊迫した空気の中にいるのにも関わらず何故か安心感を抱いた。
「お前は何をしている?」
怒りに満ちた、双子の父親の声音が聴こえる。
だけれど不思議と恐怖を感じることはなかった。
「見れば分かるだろ?こいつを殺したら俺も死ぬ。なら先に俺が死んでも問題ない。」
シオンは本当に何でもないようにそう言い放つ。
「言っとくが、俺は本気だ。下手な動きをしたら、あんたの育てた大事な跡取りが居なくなることになる。」
「・・・・お前は、本当に賢いやつだ。」
双子の父親はそう言って微かに笑ったけれど、直ぐにまたいつものぞっとするような声音に戻った。