叶う。 Chapter3
だから私は後悔しないように、大切なものを2度と失わないように、これから努力していくしかないのだ。
部屋の出窓から外を覗いてみると、来た時に微かに見えた庭が階下に広がっていた。
その場所はとても綺麗に手入れされていた。
彫刻にちいさな噴水。
そしてその場所は綺麗な薔薇のアーチで囲まれていた。
“滅びる事のない愛”
シオンはどんな想いで、あの薔薇を見つめていたのだろうか。
アンナを想い、きっとそれをずっと心に隠していたんだろうと想うと、私は胸が痛くなったけれど、いつの間にか涙は止まっていた。
私は窓から視線をそらすと、すぐ隣に置かれたアップライトピアノの椅子に座って、ピアノカバーを外して鍵盤蓋を押し上げた。
見た感じだけでも、きっと誰かが使っていた物だろう事がなんとなく分かった。
一体誰が使っていたのかは分からないけれど、鍵盤を一つ押すとそれはだいぶ使い込まれているように感じた。
静寂の中に、綺麗なレの音が響き渡る。
かなり年代物だけれど、その音はとても美しかった。
私はゆっくりと深呼吸をして、両手を鍵盤の上に置くとママが好きだった、ショパンの別れの曲を心を込めて演奏した。
題名は悲しいけれど、その音はとても美しい。