叶う。 Chapter3
/脱出
だけれどシオンは父親から視線を外すことはしなかった。
もう一度、視線を合わせたい。
シオンに触れたいと思って、私はその場を動くことを躊躇った。
「シオン?・・・・ねぇ・・・シオン!!」
私は泣きながらシオンに呼びかけたけれど、シオンは一切動じる事もなく真っ直ぐに前を見据えたままだ。
レオンはそんな私を強引に担ぎ上げると、美弥を連れて慌てて一緒にその部屋を出る。
私は最後までシオンの横顔をずっと見つめ続けていた。
それは扉が閉まるまで続いたけれど、やっぱりシオンは一度もこちらを見ることもなかった。
「アンナ、頼むから急いで。時間がない!」
部屋を出るとレオンは私を降ろして腕を引いた。
私は未だに状況が分からなくて、扉の前から動けなかった。
シオンが中に居るのに、自分だけ逃げようなんて思えるわけが無かった。
レオンはそんな私に軽く舌打ちすると、また強引に担ぎ上げてその広い廊下を走った。
段々と遠ざかるその部屋に、私は何故か涙が溢れて止まらなくなる。
こんなに近くにシオンがいるのに。