叶う。 Chapter3
「アリス、母さんをお願いね。俺達のことは気にしなくて良いから。」
私はレオンのその言葉にしっかりと頷いて、隣に居るママを見上げた。
ママはすっかり憔悴しきった顔をしていたかれど、あの家に居た時より若干顔色が良さそうに見える。
「ごめんね、アンナ……。」
ママがそう言うと、レオンが直ぐにこう言った。
「アンナじゃなくて、アリスだからね!母さんはリズだよ。間違えないように。」
ママはその言葉に少し困った顔をしたけど、直ぐに呟くように「アリス、アリス。」と、自分に言い聞かせていた。
それから暫くして、車は空港の側に停まった。
レオンは車を降りると、辺りを見回しながら警戒をしている。
「オーケー、先回りはされてなさそうだ。多分シオンが巧くやってくれてる。」
レオンは車のトランクを開けて私達の荷物を取り出すと、私達に車を降りるように指示を出した。
私は先に車を降りて、ママに手を差し出した。
ママはやっぱり少し不安そうだったけれど、私の手に掴まるとゆっくりと車から降りた。
美弥はレオンからトランクと鞄を受け取ると、一言、二言会話をしている様子だったけれど、行き交う車や人々の声に紛れてしまって私にすら聞こえてこなかった。