叶う。 Chapter3
状況が全く理解出来ない私は、その白い煙に目を細めながらも目の前の男性に声を掛けた。
「あ、あの……月島省吾さん?」
「あ?お父さんだろうが。」
「お、お父さん?……あの、私なんでここに?」
「住めりゃ良いって言っただろうが。」
「…………。」
確かに私はそう言った。
だけれどこれじゃあ、双子との父親との約束を破る事のような気がしてならない。
双子の父親は、援助は一切無しだと言った。
私はもう一人になるのだと。
ここに住まわせて貰えるのは正直有り難い。
だけれどこの人は、双子の父親をボスと呼んでいるからきっと知り合いなはずだ。
それに、月島と言うこの人の戸籍に私を含め、ママもシオンもレオンも入っていた。
月島と言う名前は、ママがこの国に滞在するために用意されたものだという事は、私も知っていた。
だから尚更、目の前のこの人とこの家に暮らす事は、家族の援助に含まれるんじゃないかと単純にそう思った。
「あの……。」
「あ?何か不満でもあるのか?」
月島省吾はそう言って、乱暴に葉巻を灰皿に押し付けた。
ママのタバコの匂いと違うその葉巻の匂いは、なぜかすごく嗅ぎ慣れなくて少し不安になる。