叶う。 Chapter3
だけれど車は直ぐに待ち合わせの駅に着いた。
流れる景色はあっという間に見慣れた景色に変わったので、私は意外とその距離が遠くはない事に安心した。
駅に近づくとそこに立って携帯を触っている和也の姿が視界に見えた瞬間、私は何だかとても胸が痛くなった。
家政婦さんが路肩に車を停めたので、私はお礼を言って慌てて車を降りようとドアに手を掛けた。
「お嬢様、申し訳ありませんがそのドアは外からしか開きません。」
その言葉に、やっぱりかという気持ちと何故そうなっているのかがとても不思議で仕方なくなった。
家政婦さんはそう言って車を降りると、私が乗っている後部座席のドアを開いてまた一礼した。
私は「ありがとうございます。」と、小さく言ってその車を降りた。
「帰りもお迎えが必要でしたらこちらに。」
家政婦さんはそう言って、私に小さなメモを渡した。
それには多分自宅の電話だと思われる番号が綺麗な文字で書かれていた。
私はそのメモをコートのポケットにしまった。
それを確認した家政婦さんはまた一礼すると、私が何かを言う隙もなく車に乗り込み帰って行ってしまった。
私は和也が居た方向に振り返ると、和也も私に気がついたのか、真っ直ぐにこちらに向かって歩いてきた。
何だかその姿にドキドキしていまうのは、きっと怒られると思っているからだと、考える事にした。