叶う。 Chapter3
「いらっしゃい。」
高齢と呼べるくらいの年齢の、多分この店のマスターだろう人がそう言いながらカウンターから出て来た。
「あっちの席座でも良いですか?」
和也はそう言って、一番奥にある二人用の席を指差した。
「どうぞ、お好きな席に。」
マスターはそう言って私達を奥の席に案内すると、メニューを置いてカウンターに戻って行った。
お店には私達しかいなかったから、やたらと視線を感じる気がしたけれど、私はコートを脱ぐと丁寧に畳んで椅子の肘掛にかけた。
「何飲む?かなうご飯食べたの?」
「うん、ご飯はいいかな。」
私がそう言うと和也はドリンクメニューを私に向けて広げてくれた。
「・・・ココアにする。」
何だか落ち着かないので、私はそれだけ言って和也にメニューを返した。
結局、和也は私に何かを聞く前に注文を先に済ませた。
私にはココアを、自分はコーヒーをマスターに頼んだ。
メニューを聞いたマスターがまたカウンターに戻った瞬間、和也は両手をテーブルの上で組んで、私の瞳をじっと見つめた。
その仕草に、私は酷く落胆した気分に追い込まれた。
きっと尋問が開始されるのだ。