叶う。 Chapter3




「お待たせしました。」


私がイライラし始めたタイミングで、マスターが飲み物を運んできた。

そのおかげで私は何とか平静を保った。


これ以上何か気に触ることを言われたら、きっと声を荒げていたかもしれないと思い、そんな自分を反省した。


マスターが去って行くと、また和也は話し始めた。


「・・・・話せなかったの?」


「そうだよ、話す時間もなかったの。突然だったから。」


「それはどうして?」


和也の質問はごもっともだと思う。
だけれど双子の父親については話すつもりも無かったし、何より少しでも関わりをもたれる事すら嫌だった。

だけれど和也は色々と勘が働くし、鋭い。
だから私はなるべく本当のことに近いことで理解して貰えるように、嘘を吐いた。


「ママはね、お嬢様だったの。ずっと両親に隠れて暮らしてたみたい。それで勝手に兄達を産んだ。なんで別居してたのかは分からないけど、私が引き取られた時にはもうお父さんは一緒に住んでなかった。」


私はそこまで話してココアを一口飲んだ。
それは甘くて温かくて、泣きたくなった私の気分を落ち着かせてくれた。


「・・・・それで?」


和也の表情が、何だかとても複雑になっていた。

怒っていたけれど、きっと何を言っていいか分からなくなってしまったのかもしれない。




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