叶う。 Chapter3
「ダメだ、俺意味が分からないよ。」
「私も意味が分からなかったよ。だけど、私が普通の生活をしていたら、一生家族には会えないの。」
「・・・・それってかなうにどうしろって事なの?」
「分からない。私もどうしたらいいのか考えてるの。」
「ねぇ、かなう?」
「うん?」
「かなうはどうしてもお兄さんに会いたいの?」
「うん、兄だけじゃないよ。ママにも会いたい。」
私はそう言って目を閉じた。
和也に別れを告げなければいけない。
目を閉じた私に、和也は無言だった。
多分、気付いているんだと思う。
私はしっかりと呼吸を落ち着かせると、その言葉を伝えようと口を開きかけた。
だけれど和也はそんな私よりも一枚も二枚も上手だった。
「かなうさ、そんな大変なこと一人で頑張れると思ってるの?」
またまた痛い所を突いてくる和也に、開きかけた口を閉じた。
一人で頑張らなきゃいけないのだと、そうは思っているけれど実際にはお父さんに保護されている私はそんな偉そうな事も言えない。
「・・・まだ、何も考えてないけど、でも一人で頑張るよ。」
私は和也の漆黒の瞳をじっと見つめた。
それはもう迷わないという私なりの意思表示のつもりだった。