叶う。 Chapter3
「……かなうの気持ちは分かったよ。」
和也は静かにそう言った。
「だけど、どうしたらお兄さん達に会えるのか分からないんでしょ?」
「それは……。」
「家族に相応しい人間になる、なんてそんなの絶対におかしいよ。一緒に暮らして家族として生活してたのに、それをかなうだけ要らないなんて、正直ママさんもお兄さんも、どうして反対しなかったの?」
和也の言ってる事はごもっともな意見だ。
だけれど家族が意見なんか言ったら、私はもう生きていない事を和也は知らない。
そして勿論、私もそれは言えない。
だから何も言えなかった。
「それに会った事もないお父さんの家におかれているなんて、俺には正直分からないよ。かなうにとってお兄さんが大事な人なのは分かる。だけど、どうしてお兄さんはかなうを置いて行っちゃったの?」
「ごめんね。もう私には何も言えない。」
正直なところ、これ以上の尋問には耐えられそうになかった。
和也の言う通り、どんな事情があっても家族が私を置いて行ったのは事実だ。
他人から見たら、私は要らなくなったから捨てられた子供と変わらない。
だけれどこれ以上説明するのも、弁解するのも私には出来ない。
これ以上は和也が知ってはいけない世界だ。
巻き込む事は出来ない。