叶う。 Chapter3
何も言えない私に、和也は相変わらず優しい瞳でこっちを見つめ続けた。
もう決めたはずなのに、私はその視線をそらすことが出来なかった。
「あのね……私……は、何をしてももう一度、家族に会いたい。」
「うん、分かってるよ。」
「だから、和也と居ると……ダメなの。」
「それはどうして?」
「……楽な方に、逃げたくなるから。」
「…………それは、かなうが決める事だよ。俺はかなうが好きだけど、かなうが決めた事は反対はしないよ。ただ、好きだから傍に居て支えられたらって思うだけ。」
「……和也が望む事は何?」
「出来ればかなうと一緒に居たい。だけど、かなうが無理だと言うなら、俺はかなうを見守る事が出来たらそれだけで良いよ。」
「ねぇ……私、分からない。どうしたら良いのか分からないよ。」
私は頭の中がこんがらがった糸みたいになってしまった。
細いその糸は、強引に引っ張れば切れてしまいそうなくらいに脆くて危ない。
本来なら、シオンは春までは一緒に居られるはずだった。
だから、私は和也との別れを選ぶつもりだった。
だけれど、それは叶わぬ願いになってしまった。
和也を傷つけてまで、一緒に居たいと思っていたシオンがもう傍に居ない。
しかもシオンは私が和也と一緒に居ることを、望んでる。
和也も私と一緒に居ることを望んでる。
私だけが、自分勝手に皆の気持ちを無視している。