叶う。 Chapter3
「かなうがどうしたいのか、それは俺には分からないよ。決めるのはかなうだよ。だけど、俺は急いでないよ、そんな大変なことがあったばっかりだし、かなうに今必要なのはゆっくり考える時間だと思うよ。」
和也はそう言って、また優しく微笑んだ。
その優しい眼差しに何故か泣きたい気分になったけれど、何とか堪えた。
そして私も曖昧に笑った。
何故か、和也は私自身よりも私のことをよく分かっているような気がした。
それが愛情という物なのかもしれない。
私には理解出来ないその感覚は、とても素晴らしい物なんだってことは理解出来る。
愛情があるからこそ、きっと相手をそうやって理解しようと考えるんだろう。
好きだなんだと口で言ったって、相手を本気で想っているならそれは言葉にする必要すらないのだ。
私は全てにおいて曖昧で、自分が何の覚悟すら出来ていないことに気がついた。
和也もシオンも、覚悟を決めて私と接してくれている。
私にはそれが出来ていない。
だからシオンは身を退いて、私にあのメモを残した。
電話では話してくれるけれど、それはきっと妹として接しているのだ。
それに和也も、待つ覚悟があるから退かないのだ。
そう思ったら、何だか自分が情けなくなってもう一度全てにおいてきちんと考えなければいけないと思った。