叶う。 Chapter3
記憶の欠片

/痛み






「とりあえず、安静にさせて下さい。以前の検査では異常は見られなかったので、恐らくですがパニックを起こした状態だったんだと思います。」



もう何度も聴いた事のある声が微かに聴こえた気がして、私はゆっくりと目を開いた。


途端に天井が少しぼやけて視界に映る。

何だか気持ちが悪くなったのでもう一度目を閉じた。


「環境が変わって、きっと精神的にも負担は大きかったと思いますから。必ず薬を服用させて下さい。明日、夜でよろしければもう一度往診させてもらいます。」


「・・・お願いします。」



私はもう一度目を開けた。


今度はさっきよりもだいぶ視界がクリアになった気がする。


途端に私を覗き込む2人の顔が、若干ぼやけて見えた。



「やぁ、アンナ。気がついたかい?」


聞き覚えのあるこの声は、きっと永島先生の声だ。

次第に焦点が合って、私を覗き込む2人の顔がはっきりと見えるようになった。


「・・・お・・・とうさ・・・ん。」


「ん?どうした?」


お父さんはそう言って、私のおでこを撫でた。


「アンナ?僕が見えるかい?」


永島先生はそう言って、私の瞳をじっと見つめた。


「み・・えます。」


もう頭痛は治まっていたけれど、何故か意識がぼんやりとしていた。





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