叶う。 Chapter3




「とりあえずは落ち着いているようだから、今日はゆっくり休んで。明日また来るから、それで話をしよう。」


先生はそう言って、私をしっかり見つめながらいつもみたいに優しく微笑んだ。

だから私も曖昧に微笑んでおいた。


「では、これで失礼します。もし、またパニックを起こすような事があれば、薬を服用させて、治まらないようならこちらに連絡して下さい。」


先生は振り返ってお父さんを見ると、名刺のような紙を手渡していた。


「はい、ありがとうございました。いきなりのご連絡ですみませんでした。」


「いえ、アンナちゃんとは長い付き合いですから。それと、薬はきちんと飲ませて下さい。アンナちゃんはどうも薬が苦手なようなので。」


先生はそう言ってちらっと私を見て、また優しく笑った。


「はい、お手数おかけしてすみませんでした。」


そう言ったお父さんは、何だかいつもの横柄な感じじゃなくて極普通の優しいお父さんの雰囲気だった。

私はやっと頭がすっきりとしてきて、自分が置かれている状況を整理し始めた。


まだ見慣れてはいないけれど、この毛布は私のだからきっと私は今、家に連れてこられたんだろう。

ゆっくり頭を動かして周りを見渡せば、この部屋が自分の部屋であることは間違いなさそうだ。






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