叶う。 Chapter3
何でアンナの記憶が、私の記憶の中に紛れ込んできたのか。
私の記憶は全てがモノクロで、色の無い世界だったはずなのに。
あの日の記憶は、全てが色付いていた。
あれはきっと私ではなくて、アンナの記憶だ。
私は目を閉じたまま、さっきと同じあの日の記憶を思い出した。
だけれど今度は頭痛は全くなく、さっきよりも鮮明にあの日の記憶を思い出すことが出来た。
私は頭の中で、アンナに呼びかけてみることにした。
“ねぇ、アンナ?あなたは見ているの?”
そう呟いてみたけれど、やっぱりアンナどころか何も聴こえることもなかった。
頭の中で何度も呼びかけてみる。
だけれどそこにあるのは私の意識だけで、何の反応もない。
一人でそんな事をしてる自分が、何だか急に馬鹿らしくなってきた。
その時、部屋の扉がゆっくりと開いた。
私がゆっくりと視線を向けると、その人達は一緒に部屋に入って来た。
何でだろうか。
なぜその人がこの場所にいるのか、私は意味が分からなかった。
「かなう、大丈夫?」
その人はそう言って、ベッドで横になる私の顔を覗き込む。
「こいつに感謝しろよ。病院じゃなくて俺に連絡を寄こしてくれたんだからな。救急車なんて呼ばれたら、お前永久に入院生活だぞ。まぁ、俺はその方が楽だが。」
お父さんはそう言って、いつもみたいに鼻で笑った。