叶う。 Chapter3
「こいつは、本当に頑固だからな。誰に似たんだか。」
お父さんはそう言って溜息を吐いた。
和也はそんなお父さんを見て苦笑いしていたけれど、直ぐに横になった私の顔を覗きこむと優しく笑ってこう言った。
「とりあえず、今は本当にゆっくり休んでね。」
和也の言葉に、私は毛布を鼻まで被ったまま頷いた。
私が頷いたのを確認すると、和也はピアノの椅子に座ってこちらを伺っているお父さんに向かってこう言った。
「おじさん、またお見舞いに来ても良いですか?」
「ああ、俺が家に居る時は来て良いぜ。電話で確認してから来ると良い。こいつが元気になったら連絡入れさせる。」
「分かりました。電話させてもらいますね。」
「ああ、悪かったな。手間掛けさせて。」
お父さんがそう言うと、和也はまた私を覗き込んだ。
「じゃあ、かなう。また来るから。ちゃんと休んでね。」
和也はそう言って私の頭を軽く撫でると、お父さんと一緒に私の部屋を出て行った。
私はこの状況が一体どういうことなのか理解出来なくて、ぼんやりする意識の中で必死に考えた。
だけれどどんなに考えても、和也とお父さんが知り合いだったという意味の分からないこの状況は、私にとって想定外の出来事だった。