叶う。 Chapter3
私がぼんやりとしていると、また部屋の扉が勝手に開く。
ちらりと視線を向けると、入って来たのはお父さん一人だった。
お父さんは何故か私のベッドの横に、いつの間にか置かれていた椅子に座って私を見下ろすようにじっと見つめた。
でもそれは怒っているような雰囲気ではなくて、私は少しだけほっとした。
私を見下ろすお父さんは、何だか少しだけ寂しそうな顔をしている気がするのは、きっと私がぼんやりしているからだろう。
「ったく、お前のせいで無駄な出費が増えただろうが。あのガキが喫茶店のトイレのドアぶち壊しやがった。」
お父さんは何故か楽しそうにそんな事を言った。
言葉は乱暴だけど、その顔は笑っているからきっとたいして気にしていないんだろうと思う。
「大体の事情は、さっきお前が寝てる間に聞いたが。何で倒れた?」
「・・・分からないんです・・・頭が、急に・・・痛くなって。」
お父さんがどこまで私の事を知っているのか分からなかったので、私はそれだけを伝える。
「さっき来た医者、なんだっけか?あいつに言わせるとパニックらしいが・・・・・ところでお前はどっちだ?」
お父さんはそう言って、綺麗な栗色の目を細めて私を見た。
「・・・・ど、どっち、って?」
「アンナなのかアリスなのか、どっちだ。安心しろ医者には言ってない。レオンから聞いたんだ。」
「・・・・アリスです・・・・。」
「じゃあ、入れ替わって倒れた訳じゃねぇんだな?」
お父さんの言葉に、黙って頷いた。