散歩唱歌
「もうじき、夕暮れが来るよ、最高なんだ、これが」

延々と絵をかく私を見て、少女はまた、にははと笑った。

そして、夕日が落ちるころ。

海は、姿を紅に変え、燃えるような夕日を優しく受け入れていた。

筆舌に尽くしがたいとはまさにこれだ。

「当たり前のことなんだけど、誰も想像しないよね、これを見に来ないなんて大人は馬鹿だ」

夕焼けで赤く染まった顔で言う。

「もう閉めますよー」

間延びした声で看護婦が言う。

私はその言葉を聴くまで身動きできなかった。
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