散歩唱歌
「マジ?」

顔を見つめられる。

私は少し恥ずかしくなり顔を背けながら繰り返した。

「ほんとだよ、海に行く」

すると、彼女はまたにははと笑って、車椅子の取っ手をこちら側に向けた。

「じゃあレッツゴー!」

私は人に見られないように、こそこそと彼女を押していった。

海を目指して十分、迷わないように道を覚えながら進んでいく。

まるで冒険で、未開の地を目指す冒険家のような気分だ。

潮の香りとウミネコの声が近づいてくる「この先海、危険」という看板を見つけた。

私は彼女と顔を合わせるとニシシと笑った。

そして砂浜、カモメが飛んでいる。

草のトンネルを抜けたとき、視界に飛び込んできた風景。

圧倒された。
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