散歩唱歌
彼女はあくびをしたふりをして涙をごまかしたが、私は一つの不安が出来た。

「治ったら、いなくなっちゃうの?」

「え?」

「治ったら、もう会えなくなっちゃうの?」

「そりゃ、いつまでも病院にいるわけにいかないじゃん」

そう、いつか終わりは来る。

子供は年齢を重ねると、死に敏感になり、両親の死を心配するそうだが、私にとってその
終わりこそが恐怖だった。

「でも、私が治る前に君が元気になるかもしれないジャン!」

「うん・・・」

なにか煮え切らないまま、その日は貝殻を集めて遊んだ。
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