散歩唱歌
「もう歩けるんだ、母さんと父さん、両方死んじゃったけど、お婆ちゃんが引き取ってくれるって」

「もう最後なの?」

黒いワンピースが風に揺れる。

髪が眼帯を隠した。

まるで、その風が砂のように彼女を連れ去ってしまうのではないか。

そんな危惧さえした。

「うん、ごめんね」

私はスケッチブックと鉛筆を持った。

「じゃあ、絵を描くよ、君の」

「月と海も入れてほしいな、記念に」

「じゃあ、歌って、踊ってくれる?」

すこしキョトンとしたあと、彼女は満面の笑みで答えた。
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