散歩唱歌
「美し少女の巖頭に立ちて 黄金の櫛とり髪のみだれを 梳きつつくちづさぶ歌の声の 神怪き魔力に魂もまよう」

ぎこちない足でくるくる回る。

私はその光景を余すことなく黒鉛筆で書き続けた。

やがて朝日が昇った。

彼女は座り込んで歌を歌っていた。

私の絵は未完成のままだった。

「コレ、もって行く?」

絵を見せる、それには黒鉛筆でのみかかれた暗闇と人の絵だった。

ただ、彼女の姿は余すことなく描きこんだ。

彼女は少し悩んだ後。

「いらない、続きをいつか描いてよ」

「いつ?」

「いつか、だよ」
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