散歩唱歌
ある日、私は外に出た。

あまりに耳に障る人の言葉と、狭苦しい箱のような病室に耐えかねた事と、ベッド側以外
の景色も描きたくなったからだ。

カラッと太陽が出た夏の日、空気がとても綺麗だった。

大きく乾いた青臭い空気を吸い込み、大きく吐き出す。

久しぶりの安心感と、開放感。

看護婦が行ってはいけないというぎりぎりの所まで私は出かけた。

そこは人気が無く、緑が多いところで、もう少し先は海でたまにおぼれる人が出たそうだ。

そして人が怖い私にとって人に叱られるのは最大の恐怖だった。

絶対の超えてはいけないライン、しかし私は出会ったのだ。

―――彼女と。
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