散歩唱歌
おそるおそる見てみると、ボーイッシュなショートカットに眼帯、車椅子の同い年くらいの少女が怪訝そうに顔をかがめて私の顔をのぞいていた。

右足は、義足だっただろうか。

その子は初対面に関わらず明るく話しかけてきた。

「よぉ、そこの君!ちょっと海を見に行こうぜ!」

私はあまりの唐突さに呆気にとられていた。

初対面で、いきなり、危険な海に連れ添わせる彼女に疑問さえわいた。

すると少女はつんつんと車椅子の取ってを指差すと。

「押してくれ」

と命令してきた。

屈託の無い笑顔、これから先は行ってはいけない場所なのに。

なんの罪も無いかのような、太陽顔負けの笑顔だった。
< 7 / 38 >

この作品をシェア

pagetop