ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
「かんぱーい!」

何に対しての、何度目かもわからない乾杯は、飲み会ならではなのかなぁ。
学生時代の合コンとはひと味違うような、本気度の見える合コン。
男子も女子も妙齢……もとい、お年頃。

男の子4人に対して女の子5人で、あぶれた私は完全に傍観者に徹していたけれど、唐突に話を降られて、目を見開いた。

「花梨ちゃんはさ、どんな人が好きなの?」

話しかけてきたのは、……ごめんなさい、つい数十分前に聞いたはずの名前も忘れてしまった、正面の男の子。
竹…なんだっけ。
思い出せない。

「あぁ……と、うーん。優しくって、自分を持ってる人。だけど、頑固じゃなくて…、人の意見もきちんと聞いてくれる人。あと、言葉はなくても良いから、愛情を態度や仕草で表現してくれる人が良いなぁ」


言ってて不思議なほど、稔兄ちゃんが思い浮かぶ。
その項目のすべてが当てはまる訳じゃないけど……。
だって、優しいけど、最後には折れてくれるとはいえ、結構頑固だし。
自分を持ってるというか、飄々と世の中を渡っているような感じ。
愛情表現は……彼女として、貰ったことはないから知らない。



だけど、どう考えても、好きな人で思い浮かべるのは稔兄ちゃんで。
なんだ、やっぱり、惰性じゃなくて、ちゃんと好きなんじゃん、自分。
ちょっと、笑えてきた。


鞄のなかに入ってたチョコレートが、急に愛しく思えた。


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