ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
鏡の奥の自分が、あまりにも酷い顔で溜め息が溢れた。

「これを渡したら、こんな想いも終わりになるのかな」


この恋に終止符を打てるのかな。
こんなにもずっと、好きだったのに。
前に進めるのかな。

わからないけど……いい加減、区切りをつけないと、どこにも進めない。






「花梨ちゃん。帰るんでしょ?一緒に出よう?」

お手洗いから出たら、壁にもたれて竹山さんが立っていた。

「竹山さん、彼女や友達でもない女の人を待ち伏せるのはあんまり感心しないです」

たまにそういうのに遭遇するけど、デリカシーどこいった、と思うのよね。

「まぁそういわずにさ。だってほら、花梨ちゃん、こうでもしないと捕まえられそうにないし?」

まぁ、帰るつもりだったので、ね。



「ね、行こう」
そう言って、私の手を取り歩き出す。
ちょっと待ってよ、行くなんて言ってないけど!


「やめてください」

振り払おうとしたって、離してくれない。
さっきまでちょっと良い人だと思ってたのが、一瞬にして恐怖と嫌悪に変わる。


< 16 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop