ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
「一人で帰れるんで、離してください!竹山さんはみんなと盛り上がってればいいでしょ?」

強引に歩き出そうとするから、引っ張られるような格好になって、肩が痛い。



「花梨ちゃん、何も聞いてないの?この合コン、俺が花梨ちゃんを連れてきてって頼み込んでセッティングしてもらったの」
「知りません、そんなこと」

どこで私のことを知ったっていうんだ。

「だからこのまま帰すわけないでしょ?」

知らない、知らない、そんなこと!
自分の無力さに泣けてくる。



「もう、離してよ!」

叫んで、振り払って、鞄をおとした。
口の開いてるタイプの鞄だったので、無惨に中身が飛び散る。
その中には、稔兄ちゃんに渡すはずのチョコレートも混ざってる。
きっと中のココアパウダーが大変なことになってる。



もうこんなんじゃ、渡せないよ。
せっかくつけた決心は、あっさりと崩れ去る。





ねえ、すぐそこにいるんだから、助けてよって言いたくなる。
私にそんな権利はないのに。



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