ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
破顔ってこんな顔?
見たこともないような優しい笑顔を見たと思ったら、次の瞬間、グィッと引き寄せられる。

「やっと手に入った……」

吐き出された言葉は、安堵の溜め息まじり。
ばっかみたい。
竹山さんのことがなかったら、きっとせっかく決心したのに今年も渡せずじまいだったし、稔兄ちゃんだって、こんなじゃなかったはず。

そう思ったら、この時間もなんだか、奇跡みたいだ。








「あ、雪だ」

見上げれば、白いものがゆらり舞い降りる。
天気予報はどうやら、外れたみたいだ。

「寒いね」
「うん。通りで寒いと思ったわけだ」
「稔くん、好き」

どさくさ紛れに呟いて、ぎゅっとしがみつく。
愛しいその人に。

ようやく言えた、その言葉と、ようやく渡せた、チョコレートを胸に。





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