ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
……あれ、まって?
稔くんは昨日確かに今まで彼女は居なかった、って言ったよね?
てことはさ。
子どものオママゴトじゃないんだし、大人なアレコレが有るわけでしょ?
そういうの、少なくとも初めてじゃない自分がリードしてかなきゃ……いけないの?
あれ?え?えぇ?
「……しもし?花梨?もしもし?」
「きゃー?!」
思わず上げた悲鳴に、ガタン、と慌てた音が耳に飛び込んできた。
「花梨?!何事??!」
私を呼ぶ切迫した声で、現実に戻ってきた。
どうやらずいぶん前に電話は繋がっていたらしい。
「ご、ごめん、なんでもないの」
「本当?」
訝しげに歪められた顔が頭に浮かぶ。
とはいえ『あなたとのこれからの関係について考えてました』なんて、本当のことは言えるわけない。
恥ずかしすぎる。
「ほんと、ほんと」
「……ならいいけど。で、何?」