ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして

あれ。
「で、何?」って言われた?
とっても面倒くさそうに、「で、何?」って言われた?


「用事がなくちゃ電話しちゃ、いけない?」

ぶすくれた声で思わず問い詰める。
こんなこと言うつもりじゃなくて、本当は「ただ声が聞きたかっただけ」って、言いたかったのに。




想いは同じなのに、伝える言葉が違うだけで、本当の想いは中々届かない。
ああ私って、かわいい女の子にはなれそうにない。


「……いや?そんなことはないよ」

耳に届いたその言葉に、どき、と胸が鳴る。
今日はやけに忙しい、私の心。


「花梨、今日は暇なの?」

クスクスと笑い声。
からかわれているような、なんと言うか。

「暇だよ、ひーま!」

だって昨日までの予定では、今日は泣いて過ごす筈だったんだもん。
予定なんていれるわけない。

「そうなんだ?」
「そうだよ」

なんだか不毛な会話だと、思わないでもないけれど。
こんな些細なことでも電話ができて嬉しいな、と思う。
思う、けれど。


今までと、そんなに変わらない?



< 29 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop