ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
はじめて作ったお菓子は、手作りなんて言えないような、市販されている板チョコを溶かして型に流しただけのもの。
しかも、電子レンジで溶かして、アルミのカップに流しただけ。
味は正直、普通、以外に言いようがない。
だってそうでしょ?
普通に売ってる板チョコだもの。
形は……レンジで溶かしたものを、耐熱容器から直接スプーンで入れただけだから、色々と悲惨ではあったけれど。
「お待たせ!さ、行こっか!」
会計を済ませて、袋を手に戻ると、二人並んで歩き出す。
並んではいるけれど、手は繋がない。
寄り添っても、歩かない。
ほんのりと開いた隙間は、多分、二人の関係を表してる。
「稔兄ちゃん。梨花子さんにチョコ貰えるとか、世の中の男の敵だよねぇ」
「そう?」
「そうでしょ?あーんな美人な人。私でも羨ましいよ」
「でも、アイツは料理、壊滅的だよ」
くすって笑って、梨花子さんを語る稔兄ちゃんの顔は、とても優しい。
その顔をさせているのは、ずっとずっと前から、私じゃない。
「その壊滅的に苦手な物を頑張って、稔兄ちゃんに、あげてるんじゃん?愛情満点じゃん」
「まぁ、そうだね」
ほらまた、優しい顔。
話を振ってるのは、自分なのに。
胸がツキツキと痛むよ。
「花梨は?誰かにあげないの。“本命”チョコ」
それをあなたが、言うのかと。
ほとほと呆れそうになるけど、それがこの人、なんだよなぁ。
鈍感男め、このやろう。
しかも、電子レンジで溶かして、アルミのカップに流しただけ。
味は正直、普通、以外に言いようがない。
だってそうでしょ?
普通に売ってる板チョコだもの。
形は……レンジで溶かしたものを、耐熱容器から直接スプーンで入れただけだから、色々と悲惨ではあったけれど。
「お待たせ!さ、行こっか!」
会計を済ませて、袋を手に戻ると、二人並んで歩き出す。
並んではいるけれど、手は繋がない。
寄り添っても、歩かない。
ほんのりと開いた隙間は、多分、二人の関係を表してる。
「稔兄ちゃん。梨花子さんにチョコ貰えるとか、世の中の男の敵だよねぇ」
「そう?」
「そうでしょ?あーんな美人な人。私でも羨ましいよ」
「でも、アイツは料理、壊滅的だよ」
くすって笑って、梨花子さんを語る稔兄ちゃんの顔は、とても優しい。
その顔をさせているのは、ずっとずっと前から、私じゃない。
「その壊滅的に苦手な物を頑張って、稔兄ちゃんに、あげてるんじゃん?愛情満点じゃん」
「まぁ、そうだね」
ほらまた、優しい顔。
話を振ってるのは、自分なのに。
胸がツキツキと痛むよ。
「花梨は?誰かにあげないの。“本命”チョコ」
それをあなたが、言うのかと。
ほとほと呆れそうになるけど、それがこの人、なんだよなぁ。
鈍感男め、このやろう。