ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
稔くんの胸にうずくまって、ホッと息を吐いた。
こんな風に暖かいこの人が、好きだ、としみじみ実感していた、ら。







「けどね、花梨。こう言うところは、変わるから」

その言葉を紡ぎ終えるのが早かったか、唇が触れたのが早かったのか。

突然落とされた柔らかな感触に目を閉じることすらできなかった。





勝手知ったる、とはいえ人様のしかも彼氏の実家の玄関先で。
キスは次第に激しさを増して、熱くなる。



震える私の耳元に「母さんはしばらく帰ってこないから」って、稔くんの声と、ガチャリと鍵をかう音。
残っている僅かな理性が、頭を覚醒させる。

えぇ?!と及び腰な私は既に稔くんの手の内。

「やっと手に入れたのに、逃がすわけないでしょ?」






今まで見たこともないような顔をして、私を抱えあげると、そのまま廊下を突き進む。

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