ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
「言い訳になるけど。……彼女、ではないんだ。ただね、俺にもやりきれない想いを抱えていた時期があって。側に居てくれた子と……」
「梨花子さん?」
稔くんの言葉を遮る。
聞きたいのと聞きたくないのと、気持ちは半分半分で。
こんな話などしないで、流されてしまえば楽になったんじゃないかって、そう思うけど。
多分、それだと私は満足できないんだろう。
「梨花子ではないよ」
キッパリとそう言い切る稔くんの瞳は、真っ直ぐに私を見ている。
「俺の覚悟が無かったせいで、昔も今も花梨を不安にさせてる。でもね、花梨。知っておいて。……昔も、今も、花梨のことだけが好きだから」