ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして

真摯な瞳が私を貫く。
多分、他の人だったら、そんなもの、と蹴散らしてしまうようなことでも。


私たちには“10年”という築き上げてきた時間がある。
その間に培われてきたのは、信頼関係。

彼氏・彼女という関係ではなくても、人として付き合ってきた時間を否定したくない。





こくん、と頷くと、優しくぎゅっと抱き寄せられた。
その腕に、甘える。


……彼女、として。

「今までの分、これからたっぷり愛していくから」



優しい言葉は、キスと共に落ちてきた。
あなたとの時間は、始まったばかり。








「……ずっと我慢してたんだ。その分、覚悟しといて」

激しさを増したキスの合間に呟かれたその言葉は、聞かなかったことにしたいと思う。














ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
after story-翌日の恋人-〈完〉