Snow Noise
「でも、怖かったあ」
ソファに腰掛けリモコンで設定を確認する臣君の左の眉が、ピクリと上がる。
「ったく、―――。
この家には猫でもいんのかよ」
「あははっ、猫の仕業ならこんなにびっくりすることもないのにね」
カチャカチャと放送局を変えると、臣君は朝のニュース番組にチャンネルを合わせた。
「にゃあーおっ」
猫なで声で鳴きまねをしながら腕に絡みついてみたものの、ちっとも相手にしてくれない。
寝ていたところを起こされて、きっと機嫌が悪いのだろう。
あーあ。
起こさないように気を使ったのにな。
〈越後湯沢から浦佐駅間で発生した車両故障の影響で、上越新幹線は運転を見合わせていましたが、7時5分頃、約2時間ぶりに運転を再開しました〉
「あ、このアナウンサー、臣君が可愛いって言ってた人だっ」
淡いパステルイエローのワンピースにくるんと毛先が巻かれた肩までの髪。
透明感のある艶やかな声色。
抜かりなく手入れされた爪先には、小さな石が煌めいている。