花と死(後編)
金色の目がクラリスを見つめる。
「まだ小さいが黒い羽がある。それと、尖った耳、金色の目。これだけ条件が揃っていて、疑わないのがおかしい。」
「だけど、だからって」
「常に私がシエンの傍にいるのなら話は別だが、そうではないだろう。」
「……むぅ。」
シエリアは膨れっ面になった。
「純血種はとても強い。制御出来なかった時、危機に陥るのはシエンだ。」
「だけど……」
クラリスが撫でると、シエリアは困った顔になった。
「出来ないことはやらない方がいい。」
ヴォルフラムはきっぱりと言う。
「こら!」
エリミアがヴォルフラムを小突く。
「な、何だ?」
思いがけないことにヴォルフラムは狼狽えた。
「気安く触るな。」
気を取り直して言うものの、クラウジアとエリミアには微笑ましいというような顔で見られている。
「やっぱり、我が旦那は可愛いな。」
「そうだねー!」
「からかうな。」
ヴォルフラムは二人を睨んだ。
「言い方を考えなさい。」
エリミアが膨れっ面で言う。
「事実を述べたまでだ。」
そう言うとメイフィスを見る。
「純血種にはいい思い出はない。あの連中は住む世界が違う。」
ヴォルフラムは嘲笑混じりに言う。
クラウジアは何か言いたげだったがやめたらしい。
「第一、どうして親が居ないかなど何も解らないのだろう?」
「そうだな。名前と年齢くらいは持ち物やこいつの話で理解出来たが。」
クラリスは頷く。
「そんな信用ならない者を傍に置くのは無用心だ。」
「その通りだな。」
そう返答するクラリスは鞄を漁り、チョコレートを出した。
もぐもぐと食べる様子をヴォルフラムは凝視する。
「幼児が何かするとてたかが知れている。ひとりでならば、どうにかして逃げられる。」
「どこにも、いかないでください。」
メイフィスは泣きそうな顔で縋る。
「メイは、クラリスさまのお側がいいのです。お留守番だってできるし、おてつだいもします!」
その姿は悲痛でひどく寂しそうだ。
シエリアの脳裏に幼い頃の自分が過る。
『兄さんのところにいたいのー!』
そう言って駄々をこねる。
『無理なものは仕方がないだろう。』
クラリスは困った顔をした。
『……あまり、私を困らせないでくれ。』
そのつぶやきは誰へ向けたというものではないだろう。
だが、シエリアには確かに聞こえていた。
シエリアは何か言いかけたが、それは気配に遮られた。
「まだ小さいが黒い羽がある。それと、尖った耳、金色の目。これだけ条件が揃っていて、疑わないのがおかしい。」
「だけど、だからって」
「常に私がシエンの傍にいるのなら話は別だが、そうではないだろう。」
「……むぅ。」
シエリアは膨れっ面になった。
「純血種はとても強い。制御出来なかった時、危機に陥るのはシエンだ。」
「だけど……」
クラリスが撫でると、シエリアは困った顔になった。
「出来ないことはやらない方がいい。」
ヴォルフラムはきっぱりと言う。
「こら!」
エリミアがヴォルフラムを小突く。
「な、何だ?」
思いがけないことにヴォルフラムは狼狽えた。
「気安く触るな。」
気を取り直して言うものの、クラウジアとエリミアには微笑ましいというような顔で見られている。
「やっぱり、我が旦那は可愛いな。」
「そうだねー!」
「からかうな。」
ヴォルフラムは二人を睨んだ。
「言い方を考えなさい。」
エリミアが膨れっ面で言う。
「事実を述べたまでだ。」
そう言うとメイフィスを見る。
「純血種にはいい思い出はない。あの連中は住む世界が違う。」
ヴォルフラムは嘲笑混じりに言う。
クラウジアは何か言いたげだったがやめたらしい。
「第一、どうして親が居ないかなど何も解らないのだろう?」
「そうだな。名前と年齢くらいは持ち物やこいつの話で理解出来たが。」
クラリスは頷く。
「そんな信用ならない者を傍に置くのは無用心だ。」
「その通りだな。」
そう返答するクラリスは鞄を漁り、チョコレートを出した。
もぐもぐと食べる様子をヴォルフラムは凝視する。
「幼児が何かするとてたかが知れている。ひとりでならば、どうにかして逃げられる。」
「どこにも、いかないでください。」
メイフィスは泣きそうな顔で縋る。
「メイは、クラリスさまのお側がいいのです。お留守番だってできるし、おてつだいもします!」
その姿は悲痛でひどく寂しそうだ。
シエリアの脳裏に幼い頃の自分が過る。
『兄さんのところにいたいのー!』
そう言って駄々をこねる。
『無理なものは仕方がないだろう。』
クラリスは困った顔をした。
『……あまり、私を困らせないでくれ。』
そのつぶやきは誰へ向けたというものではないだろう。
だが、シエリアには確かに聞こえていた。
シエリアは何か言いかけたが、それは気配に遮られた。