花と死(後編)
「!」
一同がそちらを見ると、ふぅっと煙草の煙を吐きながら男が現れた。
「客の前では煙草は吸わないの。」
女性が叱るように言う。
「はいはい。」
男は煙草を握り潰した。
「我が名はルシファー。」
「我が名はルシエル。お見知りおきを。」
恭しい口調で男と女性が名乗った。
「とはいえ、キミ達とはもう知り合いだね?」
シエリアを見てルシエルが言う。
以前に覚えがあるやり取りだ。
「なるほど。一連の騒動はメルヒェンが関わっていたのか。」
二人が属する組織の名をクラリスは言う。
「正解。」
ルシエルは笑う。
汚い世界を変える為の組織。
理想となるもの以外を殺すという過激な思考を持っている組織だ。
「その子はメイフィスだね。」
ルシエルはメイフィスを見る。
「だれ?」
「君を探してたよ。」
そう答えると優しく笑った。
「メイヒェン創始者の一族の子。……我らが神となるべき血筋。」
ルシファーはメイフィスに歩み寄る。
「お戻りいただこう。」
伸ばされた手を拒否するようにメイフィスはクラリスの後ろへ隠れた。
「神となるべき血筋と言うのなら、何故こいつはお前らとは居なかった?」
「ふふふっ、君には関係ないことだよ。」
クラリスにルシエルは言う。
「でも、教えてあげる。」
そう言って嗤う。
「その子の親は今や我が神。創始者の一族の長。その子供を殺そうと企んだ愚かなひとの手から逃れさせようと、神は赤子だったメイフィスを孤児院に預けた。でも、孤児院はつい最近起こった火事で喪失。今や、天涯孤独の身というわけさ。」
「迎えに来たのは、当時よりもメンバーが増え、守るだけの戦力があるからだ。」
ルシエルとルシファーは言うとメイフィスを見る。
「おいで。」
エリミアがメイフィスを守るように抱きしめる。
メイフィスはエリミアを信頼している様子で抱き返す。
そして、エリミアはメイフィスを抱き上げる。
「シエン。」
ルシエルは優しく歩み寄る。
「君にも来てもらうよ。」
「シエンに手を出すな。」
クラリスとクラウジアは声を揃えて言った。
「ん?」
驚いた様子で二人は目を合わせる。
「この村を襲ったのも貴方たち?」
「そうさ。此処に住む妖怪どもを狂わせて殺し合いをさせたのさ。」
シエリアにルシエルは答える。
「貴方たちのやり方は間違ってる。」
“でも、”と目を伏せて歩み寄る。
< 5 / 20 >

この作品をシェア

pagetop